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「彼らが本気で編むときは、」

映画「彼らが本気で編むときは、」を観てきた。

 

もともと生田斗真が好きで彼の作品は観ていて、昨年トランスジェンダーの役を演じると知って公開を楽しみにしていた。さらに脚本/監督が「バーバー吉野」「かもめ食堂「めがね」荻上直子ということで、LGBTというセンシティブな題材でもきっとあたたかい作品になっているんだろうと期待していた。

 

 

以下、ネタバレを含みます。

 

 

もうとにかく生田斗真演じるリンコさんが綺麗。肩幅とか手とかパーツはどうしたって男性なんだけど、所作や声色、やわらかい表情から女性「性」が感じられて、難しい役だったはずなのに完全にリンコさんを演じきっていてさすがとしか言えなかった。そしてどんどん綺麗になっているように感じたのは、トモの存在によって、リンコさんの中の母性が芽生えていったからだろうと勝手に解釈してる。

 

リンコさんも、桐谷健太演じるパートナーのマキオも、ビールを飲むときに「あ〜ビール発明した人にノーベル賞あげたい」って言うんだけど、めちゃくちゃわかる〜〜〜!と思って笑えたwあれはもともとどっちの口癖なんだろうってこちらに想像する余白を与えてくれるところも素敵だった。
リンコさんはマキオがいるときは瓶ビールをちゃんとグラスに注いで飲むのに、いないときはラッパ飲みしているところも共感できたw私は彼氏の前でもラッパ飲みしちゃうタイプだけど、好きな人を前にしたときのリンコさんの可愛らしさが表現されていて、ああいう細やかな演出も女性監督だからこそできたんじゃないかなと思う。

 

 

私は学生時代、国際色豊かな学部に通っていたこともあってかゲイの友達もレズビアンの友達もバイの友達もいたし、アメリカ人の女性教授も自分がレズビアンだということを公言していた。そしてそれをみんな当たり前のことのように受け入れていた。トランスジェンダーにも理解はあるほうだと思う。でも世の中のみんながみんな、そういう人ばかりじゃない。差別や偏見もある。

カイの母親のように、リンコさんを見て「ああいう種類の人とは関わったらダメ」と言ったり、自分の息子が"普通"でないことを認められない人もいる。

その点、リンコさんは母親が一番の理解者で、いつも偏見と闘ってリンコを守ってくれていた。「おっぱいが欲しい」と泣くリンコを優しく抱きしめて「リンちゃんは女の子だもんね」って返すシーンが印象的で、娘を想う母親の愛がつまっていて号泣してしまった。

 

あのリンコのために編まれた「おっぱい」は、母親の愛情の象徴だと思う。だからリンコさんもトモに「おっぱい」を編んで贈ったのだろう。血は繋がっていなくても、リンコさんはトモを大切に想い、紛れもなくトモの母親だった。

 

 

この作品にはいろんな人が出てくる。彼らそれぞれの"普通"が、それぞれにとっての"普通"ではないし、私が思っている"普通"も、世間一般では"普通"ではないのだろうと思う。

ただジェンダーについて一辺倒に描くだけじゃなく、家族のかたちとか、"普通"とはなにかについて考えさせられた。

泣けて、クスッと笑えて、やさしい気持ちになれる、良い映画だった。